馬場さんの葉巻と言えば思い出すのは、俺が相撲からプロレスに転向したばかりの頃。馬場さんが住んでいたリキマンションの一室を借りたら、部屋に冷蔵庫がすでにあって「俺が使っていいんだ」と思って冷蔵庫を開けたら、馬場さんの葉巻がびっしり入っていた。さすがに馬場さんの葉巻と一緒に俺の物を入れるわけにはいかない。冷蔵庫を買う金が浮いたと思ったのに(苦笑)。

  そうそう外国人レスラーといえば、ロード・ウォーリアーズのアニマルとホークも印象的。なぜかというと、彼らは日本のラーメンが大好きだったんだ。「肉(チャーシュー)も麺もあって、こんなグッドフードはない! ホットドッグほどヘビーじゃないから胃に優しいし、一杯ですべてをまかなえる」と、全国各地どこへ行っても会場の近くでラーメンを食べていたよ。ホットドッグよりラーメンの方がヘビーだと思うけどね(笑)。特にホークが気に入って「あの店のラーメンはどうだこうだ」と一丁前に講釈垂れたりしていたよ。

  彼らはいつも試合前の練習でベンチプレスで250キロを挙げたり、バックプレスで150キロを挙げたりとハードなトレーニングをして、その後にラーメンを食べて、試合をするんだ。「ラーメンはクイックエネルギーとして本当にいい!」って言ってね。近所のラーメン店もいきなりデカい外国人が2人で来てビックリしただろうね。

  アニマルとホークだけでなく、ほかの外国人レスラーにもラーメンは評判がよかったよ。彼らのように日本に来た外国人が「日本にうまいヌードルがある」と本国で紹介して、それを聞いた人たちが日本でラーメンを食べて、さらに海外でラーメン店ができると「そう、これだ、これ!」となって現在のような人気になったんじゃないか。だとしたら、アニマルとホークもラーメンの発展に一役買っていたかもしれない。ということで、海外でも人気となったラーメンも“フードの殿堂入り”を推したいね!

  フードの殿堂でもうひとつ、焼肉も推したい。俺が相撲界に入ったばかりの14~15歳の頃に、肉の価格がぐっと下がって、浅草なんかの下町を中心に焼肉が安く食べられるようになったんだ。それまで肉といえばステーキやしゃぶしゃぶで、とても高価だからタニマチと一緒じゃないとなかなか食べられない。そこに安価な焼肉が食べられるようになって、よく食べたもんだ。俺の相撲やレスラーとしての体を作ったのは間違いなく焼肉だね。そのころから日本人の平均身長もどんどん伸びたんじゃないかな。安くて腹いっぱい肉が食べられるのは、相撲取りやレスラーにとって大事なこと。今は昔ほど体の大きなレスラーがいなくてさみしいじゃない。今の子どもたちもどんどん焼肉を食べて体を大きくして、将来プロレスラーになってほしいね!

  では、次回も天龍源一郎の“個人的殿堂入り”を話すとしよう。国内外の俳優や歌手、それに天龍にとって一番外せない殿堂入りの人を紹介するから、誰だか予想して待っていてくれ!

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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