保阪正康著『「檄文」の日本近現代史 二・二六から天皇退位のおことばまで』(朝日新書)※Amazonで本の詳細を見る
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 もっとも、いま昭和55年の段階で、事態は田宮のいう方向には進んでいない。ベトナム、ラオス、カンボジア、中近東が、「全て拡大、前進」しているとはいいがたい。

 田宮ら9人が、北朝鮮にいってから10年の歳月が流れた。ときおり訪朝団をつうじてはいる情報では、彼らは学習に余念がないという。そしていま、「明日のジョー」たちは「自らの思想がまちがっていた」と告白しているそうである。とするなら、彼らはみごとに現実によって復讐されているのではないだろうか。なるほど、彼らは「明日のジョー」だったかもしれない。チャンピオンのまえでジョーが燃えつきたように、9人のジョーも燃えつきたといっていい。

 このハイジャックの2年後の昭和47年、連合赤軍浅間山荘事件がおこり、大量リンチ事件が発覚した。また、海外で活動をつづける日本赤軍というグループが誕生している。彼らのイデーは、無限に現実とかかわりをもとうとしているかのようにみえる。しかしそれはつねに不毛の土壌で消えていくアダ花のように思われる。

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