「さあ、さあ、美味いわよ、食べてェ」

 まあ折角だから食べましたわよ。一気に口の中に大福をほうり込みました。

「ギャーッ!」と口の中で発火した大福! 氷と火を口の中にほうり込んだ状態、悲鳴を上げて悶絶。椅子からころげ落ちた(本当に)僕の口の中で何が起こっているかわからないセトウチさんは、目、鼻、口の配置が滅茶苦茶に、まるで福笑いの顔になって大喜び。まあ、この日は谷崎賞のお祝いに駆けつけたので、この受賞でごきげん。何を見ても嬉しくて仕方ないセトウチさん。目の前で起こっている僕の悲劇も大喜び。

 本当に主婦だったのですかね。まなほ君、このチン大福が唯一のセトウチさんの手料理でした。エッセイはウソを書きません。本当の話です。ただお寿司をいただいたことは何度かありますが、これは寿司屋の出前でした。

 ステーキハウスにも何度か連れていっていただきましたが、これもシェフの料理でした。ぜんざいはスタッフの方々。得意だとおっしゃるギョーザもタンメンもまだいただいてません。

 一度暑い日に西瓜が食べたくなって持っていきましたが、とうとう帰るまで出ませんでした。以上。セトウチさん元気になりましたか。

◆瀬戸内寂聴「100歳の誕生日を無事に迎えられますように」

 横尾先生へ。

 思わず体を揺らして大笑いしてしまったAM6時。家族はまだ眠っているので大声で笑えません。静かに笑うって難しい!

 大福のエピソード、ひどい話ですね。確かに寂庵には暗黙のルールがあり、横尾先生がお見えになられたら、ぜんざいを必ずお出しするということは私が寂庵に来る前からすでにございました。

 甘いものがお好き、特にぜんざい、と瀬戸内が常々申していたからです。

 まさか、温めた大福をお出しするとは……口の中でおが溶け、あんこと混ざりあい、即席ぜんざいになるという、ある意味、どこかの洒落たレストランがしそうなことですね。流石瀬戸内!と仰ぎたいところですが、横尾先生が口を火傷されていなかったのか、とても心配にもなります(と言っても大笑いしていましたが)。

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