奈良県・大峯山。断崖絶壁からぶら下がる山伏修業「西の覗き」(c)朝日新聞社
奈良県・大峯山。断崖絶壁からぶら下がる山伏修業「西の覗き」(c)朝日新聞社

 都心から大山の登山口まで約90分。そこからはケーブルカーで中腹まで登れるため、シーズンになると多くの人で賑わう。登山道はかなりよく整備されているが、入山者の数に比例して遭難も少なくない。昨年は45件、50人が遭難した。

 関西はどうか。

 大阪周辺で最も遭難が増加しているのは奈良県。桜で有名な吉野山の南には大台ケ原や大峰山系など、魅力ある山々が連なり、多くの登山者が訪れる。

 前出の間瀬田さんは、「昨年から山岳遭難の発生件数が急に増えています」と話す。

 奈良県内の遭難は、19年は46件だったが、20年は56件と、約22%増加した。69人の遭難者のうち、半数以上が大阪からの登山者だった。そのほとんどは間瀬田さんが所属する吉野警察署管内で発生した。

 神奈川県と奈良県、いずれも遭難が多発しているのは標高2000メートルに満たない山で、比較的簡単に登れると思われがちだ。決して「高い」とはいえない山で、なぜ遭難件数が増えているのか。

■どこで迷ったのかすらわからない

 遭難で目立つのは「道迷い」。特に奈良県では約49%(20年)が道迷いによる遭難を占める。

 今年7月、手軽に登れるとされる観音峰(1347メートル)を目指した大阪大の教授(68)が道に迷い、遭難したケースは大きく報道された。道に迷った際、転倒し、骨折して動けなくなったが、さいわい2日後に救助された。

 観音峰を含む吉野警察署管内の山は「ルートがしっかりと見えない場所がけっこう多い」と、間瀬田さんは説明する。

「道がわかりにくい場所にはピンク色のテープなどが貼られていますが、テープはひとつの目安であって、少しでも道を外れてしまうと、まったく違った方向に進んでしまったりする。実際に迷われた方の話を聞くと、どこで迷ったのかすらわからない人もいる」(間瀬田さん)

 道標がしっかりと整備された神奈川県の大山でも道迷いによる遭難は多く、特に表参道尾根や雷ノ峰尾根の分岐で遭難が多発している。

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