長尾:それは医師が患者さんに携帯電話の番号を教えるということですか?

尾崎:そうですね。メールなども使って、医師と患者さんの相互通信体制をつくって毎日連絡をとり、状況を把握するということです。そして保健所から連絡がいったあとも、なるべく引き続き診てほしいとお願いしています。保健所からのパルスオキシメーターがなかなか届かないという状況もあったので、都の所有分から医師会に半分貸与してもらい、発熱外来をおこなっているクリニックに配っています。

長尾:私も毎日10~20人コロナの診断をしていますが、メールや電話でのやりとりですむことが多く、往診が必要なケースは1日1、2人程度です。かかりつけ医もぜひコロナの最初の砦としてがんばってほしいです。抗体カクテル療法などいくつかの武器も使えるようになりましたから、早めに使って治療し、「自宅で放置された」と言われるようなことがないようにしたいですね。

長尾:先日、尾崎先生が東京都医師会の会見で、開業医がコロナを診ていくことなどを発信されましたね。行政と連携して開業医の旗振り役になっている姿を見て心から応援していますし、とても心強いです。

尾崎:長尾先生は尼崎の医師会でコロナの治療マニュアルづくりに携わっていますよね。参考にさせていただきました。私のクリニックでも発熱外来をおこなっているので、コロナ患者さんを診ていますし、毎日60人くらいにワクチンを打っています。

長尾:都の医師会トップで激務の先生が、ワクチンもご自身で打たれているんですね。

尾崎:大変ですが、われわれ開業医が積極的に診ていくことが、コロナ禍を乗り切る一つの道なのではないかと。発熱外来やワクチン接種をおこなっていない先生方もぜひコロナを診てもらいたい。今こそ患者さんを助ける喜びを味わえるチャンスだと思うんです。

長尾:コロナは大変ですが、それで得たものもあったと思います。自宅療養という言葉が知られるようになり、それはつまり在宅療養なのだと知ってもらって。

尾崎:入院すれば病気は治るかもしれないけれど、寝たきりで人とも会わないため、ADL(日常生活動作)は落ちていきますよね。からだ全体のことを考えたら、入院のデメリットはたくさんあると思います。

長尾:コロナで病院信仰に歯止めがかかったかもしれないですね。今は自宅療養というと、放置されるようなイメージをもたれていますが、家で療養してそれはそれでよかったと言ってもらえるようなシステムをつくらないといけないと思っています。東京都医師会の発信はみなさん、注目していると思います。これからも尾崎先生の力強い発信を期待しています。

(文・中寺暁子)

尾崎治夫医師●おざき・はるお

東京都医師会会長。おざき内科循環器科クリニック(東京都東久留米市)院長。1990年に開業。東久留米医師会会長を経て、2015年から東京都医師会会長を務め、16年からは日本医師会理事も務める。

長尾和宏医師●ながお・かずひろ

医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック(兵庫県)院長、日本尊厳死協会副理事長。著書に『ひとりも、死なせへん~コロナ禍と闘う尼崎の町医者、551日の壮絶日記~』(ブックマン社)など。

※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版 コロナで注目!在宅医療ガイド』より

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