10月19日の公示後、立候補の届け出を済ませた候補者たちは一斉に街頭で選挙活動を始めた。投開票日前日の30日まで激戦を繰り広げる(撮影/写真部・馬場岳人)
10月19日の公示後、立候補の届け出を済ませた候補者たちは一斉に街頭で選挙活動を始めた。投開票日前日の30日まで激戦を繰り広げる(撮影/写真部・馬場岳人)
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 全国で激闘が繰り広げられている衆院選。政党内の同志、元上司や元部下と対決する候補者もいる。AERA 2021年11月1日号から。

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 同じ政党内や、かつて同志だった者たちが「生き残り」を賭けて戦う選挙区もある。

 同じ自民党内のベテラン2人が、公認をめぐり激突した「長州戦争」の結末は参院からくら替えして、山口3区から出馬を決めた林芳正氏(岸田派)に軍配が上がった。長年、同選挙区をあずかってきた河村建夫・元官房長官(二階派)は引退に追い込まれた。決定打は岸田政権誕生だった。

 河村氏に「引退勧告」を迫ったのは甘利明幹事長。衆院解散の前日の出来事だった。河村陣営の一人は、党の公認権を有する二階俊博氏の失脚が大きかったとため息をつく。

「ある意味、自民党内の権力闘争に巻き込まれた。もし、菅政権があのまま続き二階幹事長だったら、こうはならなかった。今回の選挙は、ノーサイドとして林さんを応援する気にはなれない。ただ、総裁選では国民的人気の河野(太郎)さんをああいう形で引きずり下ろし、岸田さんを首相にする党ですからね」

■中国ではなく北関東

 河村氏の支援者の間には、もう一つの不満が渦巻く。河村氏の後継者で長男・建一氏の処遇だ。本来であれば山口を含む比例中国ブロックからの出馬のはずだったが一転、縁もゆかりもない北関東ブロックに追いやられたのだ。比例中国ブロックの名簿には、あの「LGBTは生産性がない」の発言で物議を醸した杉田水脈氏の名前もあり、比例名簿の順番をめぐっても熾烈な争いがあるのだ。支援者の一人はこう憤る。

「これまで自民党に尽くしてきた河村氏を引退に追い込み、後継者は山口から排除する。もっとも、県連会長をはじめ、山口自民党は安倍晋三元首相の息がかかっていますから。二階氏の支援を受けていた河村氏が許せなかったのでしょう」

 建一氏は20日、地元山口県萩市での出陣式で「必ずふるさとに戻ってくる」と決意を表明したが厳しい戦いになりそうだ。野党統一候補として迎え撃つ立憲民主・坂本史子氏は、鉄壁の保守地盤と呼ばれる同選挙区で、厳しい選挙戦を強いられることが予想される。

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