この時、細野氏が自らの政治生命を賭け、頼ったのが二階前幹事長だった。しかし、その二階氏は菅政権の退陣と同時に幹事長の座を失った。無所属の立場で自民党入りを模索する細野氏。自らの地盤である静岡5区では、自民公認の吉川赳氏、そして立憲民主新人の小野範和氏との三つどもえの戦いを強いられている。

 選挙区で細野氏は圧倒的な強さを誇っていた。自民入りを明言したことで、離れた支援者も相当数いる。その一部は立憲の小野氏の支援に回った。

 迎え撃つ自民公認の吉川氏陣営。確かに知名度では細野氏が上回る。しかし、選挙は「現職優先」という自民の掟もあって公認を取り付けた。また、これまで細野氏と地元で敵対してきた自民静岡県連は、そもそも細野氏の自民入りに反対する。吉川氏の選対本部関係者は細野氏への敵対心をあらわにする。

「自民党は懐が深い党ですよ。だけど、野党で居場所がなくなったから自民に助けてくださいとやってきた細野氏に、『はい、そうですか』と言えるか。そんなはずはない。自民の正統な候補者は吉川しかいない」

 吉川氏は岸田首相を「師」と仰ぐという。その岸田氏が念願の首相になったことを強調。岸田首相誕生が「追い風」であることは間違いない。細野氏はこれで負けたら政界を引退すると明言した。まさに政治生命を賭けた戦いを強調している。(編集部・中原一歩、福井しほ)

AERA 2021年11月1日号より抜粋

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