「人生は終わりなき挑戦」とか「人生は創造の連続」なんて言葉もありますが、これはつまり「退屈したくないんだ」ということだと僕は思っています。
人類は退屈とずっと戦ってきて、それが政治になったり芸能になったり仕事になったり芸術になったり趣味になったりしたんじゃないでしょうか。
お酒とかネットとかギャンブルとか、何かに過剰に依存する人は、分かりやすい形で「人生の退屈」から逃げているのだと思います。
グナシさん。グナシさんは、毎日、何をして過ごしているんですか? 毎日、退屈していませんか?
本や漫画、アニメやテレビを見ないで、どうやって仕事が終わった後の時間や休日を埋めているんですか?
文面からまったく分かりませんが、僕はそれが一番知りたいことです。
仕事が終わって家に帰って、何もしないまま数時間過ごし、そして寝るという生活ですか? そんな毎日が可能なのですか?
「暇つぶし」は、「夢」とか「気力」とか「生産性」とか「創造性」とか、ポジティブなこととまったく関係なくていいのです。
『大東京ビンボー生活マニュアル』(前川つかさ)という漫画がありました。僕の大好きな作品なんですが、主人公のコースケは、毎日、何もしません。生活費がなくなるとバイトをしますが、それ以外は本当に何もしません。でも、退屈はしないのです。
ある連載の回では、寝っころがって、天井を見上げて、天井の木目の模様を見ながら「あ、これは宇宙船に見える」とか「犬に見える」なんて探して楽しんで一日が終わるのです。
別の回では、うとうとと寝ていて、聞こえてくる街の音を楽しみます。子供が遊んでいる声、誰かの歌声、誰かの足音。それを聞きながら、一日が終わるのです。
何もしないことがじつに豊かに描写された漫画でした。コースケは、いまのグナシさんと同じぐらいの年齢の設定です。頑張るとか気力とか昇進とか夢とかとは、まったく無縁の状態で生きていて、じつに充実しているのです。