では、対話型リーダーを実践するためには、何が必要でしょうか。
まず、何より大切なのは「傾聴」です。チームメンバーの言葉を、熱心に聴くことからすべては始まります。僕が世界最高のコーチとして慕っているギャラップ社のジェレミーから、こんな話を聞きました。
たいていの上司は、部下の話を30秒も黙って聞いていられないものだ。部下が話しているのに、30秒と待たず自分が話しはじめてしまう。ときには相手の言葉をさえぎり、ときには人の話に割り込んでまで、自説を主張する。「ああ、その話はよくわかる。僕にも似たような経験がある」と体験談を披露したり、「それは失敗するからやめたほうがいい」と頭ごなしに相手のやる気を削ぐような発言をしたり。多くの人が、教えることが上司の仕事であり、リーダーシップであると誤解しているのです。
しかしリーダーは、先生のように教壇に立つ必要はありません。チームとしての方向性を決定し、メンバーの考えや思いを明確にし、それぞれが学習したことを最大限に発揮できるように導く。これが本来の役割なのです。
「あなたは、いま、何を考えている?」
「どんなことに、ワクワクする?」
「あなたは、これから、どうしたい?」
そんなふうにメンバーに問いかけてください。丁寧に質問してください。彼らの声を熱心に聴いてみてください。
■「答え」は与えず、引き出す
「聴く力」「質問する力」は、これからのリーダーに欠かせないスキルです。
コーチの役割を担うリーダーは、メンバーに対して「答え」を提示しません。自身の経験則からわかっていたとしても決して結論を先に言わない。それは「答え」を提示しても、意味がないことを知っているからです。
僕がこれまでに出会ったリーダーのなかにも、立場を利用した強制力で部下を動かそうとする人はいました。そういう人の下で、部下は一見従順な姿勢を示すのですが、実は、その場を切りぬけることしか考えていないものです。