■「北京五輪」出席も課題

 日本を取り巻く国際情勢も厳しさを増している。米国と中国との対立は激化し、台湾をめぐる応酬も続く。米国は、中国に立ち向かうために岸田政権に対して防衛費の大幅増額を迫る構えだ。中国側は、日本との経済関係をちらつかせて日米を引き離そうとするだろう。来年2月の北京冬季五輪に岸田首相が出席するかどうかが当面の課題となる。自民党内の保守系グループは、早くも「首相の五輪出席反対」を叫んでいる。外相経験の長い岸田首相だが、米中対立にどう向き合うかという難問が重くのしかかっている。

 そして通常国会の先には参院選が控える。今回改選となるのは2016年の選挙で当選した議員たち。この時は安倍晋三政権下で自民党優位の選挙だった。改選121議席中、自民党が56議席、公明党が14議席を確保して与党が大勝した。野党第1党の民進党(当時)は32議席にとどまった。

 その6年後となる来夏の参院選では、野党がさらに候補者調整を進めそうだ。国民民主党を支援する民間労組は、全国区で自分たちの代表を当選させたいが、国民民主党の自力では1人か2人の確保が限度。そのため労組の多くは立憲民主党に結集する流れが出るだろう。自民党は、大勝した6年前に比べて議席を減らす公算が大きい。自民党内で「岸田首相で参院選が戦えるか」という声が高まり、「選挙の顔」選びが動き出せば、自民党内は混乱必至だ。

 今回の総選挙で目立ったのは「政治に声を届けたい」というボランティアたちの活発な動きだった。コロナ危機の中で混迷した政治に対する不信が、選挙への主体的な参加につながっているように見える。こうした動きが、政治の地殻変動をもたらした。さらに大きなうねりに広がっていくのか。総選挙後の日本政治の見どころである。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2021年11月8日号