総選挙を終えても岸田首相の前には、コロナ対策から外交まで課題が山積だ。来年夏には参院選も控える。政治を取り巻く環境も動き始めている。AERA 2021年11月8日号で取り上げた。
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10月31日に投開票された総選挙で自民党は議席を減らし、政権発足から1カ月足らずの岸田文雄首相は、手痛い「苦戦」を強いられた。自民党内では甘利明幹事長が小選挙区で敗北するなど大臣経験者らが苦戦。甘利氏は幹事長を辞任する意向を表明した。経済や外交の試練も続く。内憂外患の岸田首相に対して、「来年夏の参院選まで持つのか」という声も聞かれ始めた。日本の政治は波乱含みの展開が続く。
■「政権交代よりまし」
この総選挙では野党の立憲民主党と共産党などとの候補者一本化が進み、各地で「自民対立憲」の一騎打ちの激戦が繰り広げられた。自民党のベテランが苦戦する一方で、自民党でも発信力の強い若手は当選を重ねた。岸田首相は全国各地を駆け回ったが、演説では「新しい資本主義」といった地味な話題に触れることが多く、自民党内からは「熱量がない」という不満も出ていた。とはいえ、「菅義偉政権のまま選挙に突入したら政権交代になっただろう。それに比べれば、ましだ」(閣僚経験者)という本音も聞かれる。
野党側は一本化効果もあって女性候補などが自民党候補と接戦の選挙区が目立った。半面で中国地方など自民党の支持基盤が厚い選挙区では苦戦した。
それでも野党勢力が増える国会では、政府・与党が厳しい追及を受ける場面が多くなる。総選挙後の特別国会から年明けの通常国会が続き、21年度の補正予算案、22年度の当初予算案、新型コロナウイルス対策のための関連法案などが審議される。野党の追及で岸田首相が立ち往生することもあるだろう。コロナ感染の第6波が押し寄せてきたら、医療体制は大丈夫か。コロナで打撃を受けた経済は立ち直るのか。岸田首相は大規模な補正予算案などの財政出動でしのぐ考えだが、財務省の矢野康治事務次官は「バラマキは認めない」と目を光らせる。岸田首相が抱える難問は数え切れない。