AERA 2021年11月8日号より
AERA 2021年11月8日号より

 反緊縮財政を唱える永濱さんは「使った人が得をする制度が必要」と言う。具体的には、期限付きの消費減税やキャッシュレス決済の所得控除、気候変動や経済安全保障関連の投資を促す税制、リカレント教育や職業訓練など人材投資も挙げる。

 反緊縮財政はいつまで続けるのがよいのか。

「金融政策運営の目標である2%の物価上昇達成まで財政規律を棚上げするのが一番しっくりくる政策です」(同)

 日本経済は需要の低迷から生じる低インフレ・低成長の問題を抱えており、コロナ禍はさらに悪化させた。政府は効果的な需要喚起策で成長戦略を実現し、マイルドなインフレを目指すことを明確にする必要がある。しかし、日本の政府・国会や学会でこの考えが主流になっていないのは、政府債務が将来世代の負担という認識が国民の間に蔓延してしまっているからだ、と永濱さんは言う。

「それは政府と中央銀行が独立した存在と捉えていた時代の考え方に引きずられているからです。リーマン・ショック以降、政府と中央銀行が連携するようになったことで、財政の予算制約はインフレ率になりました」

■反緊縮財政のメリット

 日本政府の債務はコロナ禍の財政支出を経て1200兆円を超えているが、これもすべてが将来世代のツケになるわけではないという。

「半分近くを政府の子会社ともいえる日銀から借りていて、同じ政府部門内での貸し借りの話。日銀への利払いは政府に戻ることに加え、元本は借り換えが可能です」(同)

 インフレ目標2%を達成している欧米は増税しないといけないが、2%に届いていない日本の現状は反緊縮財政のメリットが大きい、と永濱さんは唱える。

 岸田政権が掲げる「令和版所得倍増」や「成長と分配の好循環」の実現に向けて重要なのは、コロナ禍からの経済が完全に正常化するまで公約の「分配重視」よりも経済成長を優先し、いかに増税を我慢するかだ、という。

 ただ、金融財政政策以前の問題として「新型コロナへの国民の恐怖心をインフルエンザ並みに下げないといけない」。そのためには、治療薬の普及と指定感染症の見直しが不可欠となる。需要喚起策が効いてくるのはその先だ、と永濱さんは言う。

「先述した『使った人が得をする制度』や気候変動・経済安全保障などへの投資を喚起することで経済を引っ張り上げ、インフレ目標2%を達成する。これが実現すれば、金融所得課税の引き上げなどの再分配政策に取り組んでよいと思います」

暮らしとモノ班 for promotion
夏の大人カジュアルに欠かせない!白のレザースニーカーのおすすめは?
次のページ