イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 沈黙が続く。しばらくすると廊下から見知らぬ男性が一人顔を出した。「いや、それはSだろ?」「パパ!」。女の子がその男の足にしがみつく。??? 「そうだっけ?」とM。「Yじゃなかったのか。Sだってさ」とM。この男がY? で、この子はYの子? なぜYは隠れてた? 「会えてよかった。酒好きだよな?」とY。「Hも会いたがってたよ」とY。「お久しぶりです。覚えてますか?」とYの側に佇む女性。「なぁ、Hも来ればよかったのに」とその女性に振るY。「忙しいからねー、Hさんも」と女性。「ねぇ」と女の子に振った。無言で頷く女の子。Hって誰だ。女性はYの妻か? で、Yは俺に何をしたんだ? そもそもYは誰だ。で、その女の子は何なんだ?

「じゃ。俺、仕事があるから先に失礼するね」とM。帰んなよ。俺はお前しかわからないんだ。いや、お前もよくわからない。俺の思ってたMじゃなかったんだった。女の子が言った。「落語、おもしろかったです」……あー、ならよかった。で、君は誰だ?

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!

週刊朝日  2021年11月12日号

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