中国共産党の習近平総書記(国家主席)の1強体制が鮮明となった。10月の第20回中国共産党大会で3期目続投を決めた習氏は党内の異論を排し、独裁色を強めているように見える。台湾有事が懸念される中、米国や日本との緊張はより高まるのか。
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今回決まった最高指導部の政治局常務委員7人の人事において、習氏は自身と距離のある政治勢力「共産主義青年団(共青団)」の出身者を徹底的に冷遇した。李克強(りこくきょう)首相と汪洋・全国政治協商会議主席は引退。次世代のホープで「ポスト習」とも目された胡春華(こしゅんか)副首相は、常務委員入りどころか政治局員にも残れず、中央委員に降格となった。
共青団は党のエリート養成機関で、胡錦濤(こきんとう)前国家主席ら多くの指導者や幹部を輩出してきた。10月22日の党大会閉幕式で胡氏が退席を促され、去り際に険しい表情で習氏に声をかけた映像がくり返し報じられ、「人事に対する不満を口にしたのではないか」といった臆測が流れた。だが、体調の悪化が理由との見方もある。胡氏は5、6年ほど前から体調を崩し、海南島にある軍の病院で療養していたことは一部でよく知られた話だからだ。
ジャーナリストで、拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏はこう語る。
「長老ですから参加を請われ、無理をしたのでしょう。胡氏が習氏に文句を言いたかったのであれば、これまでいくらでも機会があったはずです。党の重要人事は、夏の北戴河(ほくたいが)会議で指導部と一線を退いた長老が集まり、話し合って決められます。中国共産党には、権力闘争を公式の場で表面化させないという不文律もあります。それに、胡氏の息子・胡海峰氏は浙江省麗水(れいすい)市の党委員会書記で、彼は習氏が始めたマフィア撲滅作戦で成果を上げてメディアから喝采を浴びるなど、習政治とも相性がいい。ですから、党大会の晴れ舞台で、胡氏が習氏に恥をかかせるようなことをするとは考えにくいのです」