「空母キラー」と呼ばれる中国軍の対艦弾道ミサイル「DF21D」
「空母キラー」と呼ばれる中国軍の対艦弾道ミサイル「DF21D」

 防衛ジャーナリストの半田滋氏が指摘する。

「中国はミサイルなどで米軍の前線基地や空母をたたく、A2/AD(接近阻止・領域拒否)といわれる戦略を強めています。現状では、台湾を巡る争いでは米軍が不利な立場にあると考えられている。米国は対抗措置として、日本に地上発射型の中距離ミサイルを配備しようとしていますし、奄美大島や宮古島など南西諸島には陸上自衛隊がミサイル基地の配備を進めている。日本は台湾有事の最前線になるのです」

 海上自衛隊は今年6~10月、138日間にわたって護衛艦「いずも」など3隻をインド太平洋海域に派遣、米海軍主催の環太平洋合同演習(RIMPAC[リムパック])にも参加した。岸田文雄首相は敵基地攻撃能力の保有を公言し、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の導入を目指している。なし崩し的に憲法9条に基づく専守防衛を逸脱し、米軍と自衛隊が一緒に戦う準備は進められているのだ。

「怖いのは、日本は抑止力一辺倒で外交による対話を軽視している点です。米国は中国とまがりなりにも11月15日からインドネシア・バリ島で行われるG20サミットで、バイデン氏と習氏が初の対面での首脳会談を実施しようとしている。ブリンケン国務長官と王毅外相も対話のチャンネルを維持しています」(半田氏)

■二項対立の構図 現実は多種多様

 米国が台湾防衛を言い募るもう一つの理由は、半導体の最大の供給源だからだ。世界最大の半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」があり、万一、中国に奪われれば米国のハイテク産業は壊滅的な打撃を受けることになる。

「結局、米国内の産業維持のためなのです。さすがに中国はICBM(大陸間弾道ミサイル)までは撃たないだろうから、通常兵器による戦争は日本だけにとどまると考えているのです」(同)

 台湾近海での米中間の緊張の高まりを背景に、偶発的な衝突などから紛争に発展する「Xデー」は何としても避けなければならない。日本にできることは何か。東京大学大学院教授の高原明生氏(現代中国政治)は、日中関係改善のため次のように提案する。

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