WAW 62222(撮影:松江泰治)
WAW 62222(撮影:松江泰治)

■気持ちが通じる模型

 16年にポーランドで写した都市模型の写真も見せてもらうと、古めかしい街並み写っている。

「これって、戦前のワルシャワの風景じゃないですか?」
「そう、そこも大事なところだよ! こういう模型って、メッセージを持っている。これは1939年にドイツとソビエトに侵略される直前の姿。最盛期のワルシャワですよ。それを『形』として残す、そういう意図が含まれている」

 大戦末期の44年秋、ワルシャワ市民が蜂起。ナチスドイツ軍は鎮圧の際、この街を徹底的に破壊した。

「だから、ポーランドでは街を模型で復元して残すのが盛んなんです。気持ちが通じるでしょう。それに、ユーモアがある。東京の模型と比べると、温かみがあって、いい感じ。模型の見本は現実の街で、それに合わせようと、それぞれの技法で作っている。それが面白いんだよ」

 ちなみに、「マキエタのバリエーション」もある。それが冒頭に書いた写真展案内にある庭のような写真で、「都市」ではなく、「地形」の模型を写したもの。

「その一つの典型例。世界地図が湖の上に浮かんでいる。デンマークの、ある農家のおじさんが43年、湖を牧草地にするために干拓作業をしていたんだって。そのとき、偶然見つけた石の形が住んでいるユトランド半島に似ていた。それにインスピレーションを得て、世界地図を作ろうと決めて、25年かけてこれを作った。世界中を歩いて巡れる。ぼくと同じような態度ですよ」

ATH 12319(撮影:松江泰治)
ATH 12319(撮影:松江泰治)

■本物に即しているから面白い

 見れば見るほど味わい深いつくりで、アフリカ大陸の国の位置に小さな国旗が立ち、サハラ砂漠やタンガニーカ湖、コンゴ川なども見える。要所がきちんと押さえられている感じがする。

「ちゃんとしている。正しいんだよ。分かる人にはよく分かる、って感じ。やっぱり、こういうものは本物に即していないと、面白くない。現実世界の写しだから、写真みたいなものなんだよ」

「確かにそうですね」と、相づちを打つと、「そうそう。そうでしょう」と、にこにこ顔。

「この写真もバッチリ順光。それに真正面ですよ。写真展会場にはさらにいろいろあるんですけれど……まあ、それは、見てからのお楽しみ」

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】松江泰治写真展「マキエタCC」
東京都写真美術館 11月9日~2022年1月23日

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