この模型は、都市デベロッパーの森ビルが所有しているもので、「あまりにもクオリティーが高い」と、松江さんは評する。
以前、東京のマキエタ作品を発表した際、「見に来た人が、『松江さん、今度は空撮ですか?』って、最後まで空撮と信じ込んで帰っていった。模型なんだけどね」。
知らなかったが、都市模型はテーマパークや博物館など、世界各地にたくさんあるという。
「でも、こんなにいいものって、たくさんは転がっていないんだよ。しかも、作品になるかは、撮ってみないと分からない。だから、いろいろなところに片っ端から行って撮影する」
写しているときは夢中だ。「撮りまくる。楽しんでいるからね。模型というのは、その物自体がとても魅力的なんだよ」。
ところが写した写真を「厳選すると、ボツになることがほとんど。わざわざ行ったのに、ダメだった、ということが多い。全部ボツになると残念だよ。そんなわけで、一つのシリーズとして見せられるようになるまで時間がばかみたいにかかっちゃう」。
■「マキエタ」の誕生
初めて都市模型を撮影したのは07年。それは意外な場所だった。
「南米エクアドルに、撮影の旅に出かけたんです。首都キトにテーマパークみたいな施設があって、小さなパビリオンに入ったら、キトの模型があった。それを写したのがマキエタの始まり。だから、これがとても重要」
松江さんはそう言って、2枚の写真をテーブルの上に並べた。
「UIO 70652」はキトの模型、「UIO 70646」は実際の街を写したもの。手作り感のあるキトの模型は東京ほどの精密度はないが、とても質が高く、街の雰囲気が伝わってくる。
「ぼくの中で、この2枚はそっくり。同一作品と言っていいくらい、すごくうまくいった。つまり、マキエタというのは、CCの派生として生まれたシリーズで、模型を模型らしく撮るのではなく、模型をCC作品と同じように撮影している」
本腰を入れて都市模型を写すようになったのは、キトの撮影から約10年後で、ポーランドを訪ねた。
「本格的に撮影するには事前に、どこにどういうものがあるか、徹底的に調べなきゃいけない。でも、ポーランドの模型を英語で検索してもあまりヒットしない。やはり、現地のポーランド語で調べないと。それが『マキエタ』という言葉だった。語感的にもぴったりきた。それで、『マキエタ』シリーズでいこうと、命名した」