写真家・松江泰治さんの作品展「マキエタCC」が11月9日から東京・恵比寿の東京都写真美術館で開催される。松江さんに聞いた。
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東京の地下鉄駅近くのファミレスの前で待っていると、自転車に乗った松江さんがさっそうと現れた。
ソファに座ると、早速、謎めいた写真展タイトルについて、聞いてみた。
「この『マキエタCC』って、よく分からないんですが、いったい何なんですか?」
「うん、そうでしょう。そこがいい」。松江さんはうれしそうに言う。
写真展案内にある作品も謎だ。緑の芝生と池のある庭のように見えるが、そこに見慣れない小さな旗がたくさん立っている。
「ちなみに、この写真もよく分からないんですが……」
「ゆっくりいこう、ゆっくり(笑)。順番に説明するから」
■「SPK 35243?」「札幌です」
後で教えてくれたのだが、「マキエタ(makieta)」というのは「模型」を意味するポーランド語で、「CC」は航空券などで目にする都市コード(City Code)。例えば、東京は「TYO」と表記される。
「つまり、『マキエタ』と『CC』という別々の作品シリーズがあって、『マキエタCC』というのは、その混成の展覧会としてのタイトル。で、始まりとしては『CC』のほうが先なんだよ」
「CC」は2001年に撮影を始めた都市の作品シリーズという。
「都市概念を抽象化するような意味合いで、都市の名前がなんとなく分かるように、撮影した場所の都市コードを一つひとつの作品につけている」
そう言って取り出した写真の縁には「SPK 35243」とあり、これが作品タイトルという。
松江さんは写真を見せながら「札幌です」と言うのだが、ピンとこない。俯瞰(ふかん)して写した街の写真には同じような高さのビルが整然と並んでいる。しかし、札幌らしいランドマークが見当たらないのだ。
「札幌の街、と言ったら、大通公園とか、テレビ塔じゃないですか?」と、たずねると、「分かりやすいように、テレビ塔をど真ん中に置いたんだけどな(笑)」。
なるほど、目を近づけて見ると、確かにあのテレビ塔が写っている。
「でも、このテレビ塔、周囲に埋もれてしまって、分からないですよ」
「埋もれているよね。べっちゃりと。そんなことを分かってほしい、と言っているわけじゃないから、それでいいの」