それがデジタル版サブスク(サブスクリプション=定期購読)の急成長である。
世界の新聞の中で、最多のデジタル・サブスク数を誇るニューヨーク・タイムズには現在500万人以上の購読者がいるが、同社が提供する料理レシピやクロスワードなどのアプリも含めると、全体の有料デジタル会員数は700万人を超える。2020年には初めて同紙の販売・広告を合わせたデジタル収入が紙媒体を上回り、これまでの新聞業界の常識をくつがえした。
◆デジタル・サブスクの急成長
それに続くワシントン・ポストでは、有料のデジタル購読者数が昨年300万人に達した。さらに、全国紙USAトゥデイもデジタル版をスタートしてから、25年間以上も記事を無料で提供し続けてきたが、7月にデジタル記事の有料化についに踏み切った。
今年8月にワシントン・ポストで初となる、チーフ・サブスクリプション・オフィサーとして、サブスク専用の担当責任者に就いたマイケル・リベロ氏は、「サブスク(の戦略)は常にワシントン・ポストの中核を担ってきました」と語る。
以前リベロ氏はParamount+(パラマウント・プラス)という有料動画配信サービスで国際マーケティングを担当していたが、同氏の採用はこれまでの新聞経営という枠組みを超えた、サブスク戦略の重要性を象徴しているといえる。
首都ワシントンを拠点にし、140年以上の歴史を誇るワシントン・ポストは、経営悪化に苦しんでいた2013年に、ジェフ・ベゾス氏におよそ250億円(2億5000万ドル)で身売りをした。新たなオーナとなったベゾス氏は翌年に、米政治ニュース専門サイト・ポリティコの創業者であるフレデリック・ライアン氏を発行人兼CEOとして迎え、「メディア・テクノロジー企業」として本格的に同紙のデジタル化に乗り出す。
新たな経営陣の下、2011年には編集部に4人しかいなかった技術チームが、2015年までにはITエンジニアやウェブデザイナー、プロダクトマネージャーなどを含む50人近くまで増加。