文科省の発表によれば、昨年度の小・中学生の不登校は19万6127人。8年連続で増加し、過去最多を記録しました(※)。なぜ不登校は増えたのでしょうか。不登校新聞編集長の石井志昂さんが、専門家や現場の声をもとに過去最多の背景を考えてみました。
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「自分でも理由はわからないんですが、45分ぐらいしか学校にいられなかった」(中学3年生・女子生徒)
中学2年だった昨年6月、突然、学校へ行けなくなった女子生徒の声です。彼女は、このあとも学校へ行けなくなったようです。彼女のように「自分でも理由がわからない」と語る不登校当事者が増えてきました。ほかにも突然の腹痛や頭痛などを訴えて学校を休む子、突然の成績不振から不登校になった子もいます。
中学校教員を15年間務めてきた方は、教壇に立ちながら「こんなに不安な子たちを見たことがない」と感じていたそうです。
「この1年間、学校は大きく揺れました。コロナの影響で3カ月間の一斉休校。自宅ですごすあいだも、子どもたちは不安だったと思います。学校が再開してからは、もっとたいへんでした。部活や修学旅行がなくなるなど、学校行事のほとんどがなくなりました。その中には『一生に一度だ』と子どもが楽しみにしていたイベントもあります。私も気の毒に思いながら、子どもを励ましていましたが、気がつけば、子どもたちのなかには無力感が漂っていました。『がんばっても発揮できる場がない』と思ったのでしょう。長年、学校で勤めていますが、ここまで不安感で揺れる子たちを見たことがありません。また、コロナ禍のストレスはうまく言葉にならず、消化できないみたいなんです』(中学校教員)
コロナ禍のストレスが「言葉にならない」という認識は、心療内科医・明橋大二さんも同じでした。明橋さんによれば、子どもたちは「コロナには慣れた」などと言って、コロナで苦しんでいることをあまり言わないそうです。「大人を心配させたくない」「苦しんでいるのはみんな同じ」という思いがあるからなのでしょう。ところが、ため込んだ思いは突然に爆発し、強迫行為にまで発展する子もいるそうです。その強迫行為は「1日に何十回も手洗いをしてしまう」「何時間も部屋のなかを歩き回ってしまう」というもの。子どもたちが表面上の言葉とは裏腹に、心の奥底で深刻なストレスを抱えているようです。