「言葉にならないストレス」が不登校増加の背景の1つでしょう。「言葉にならないストレス」に苦しむとき、人はその苦しさから逃れようと、要因を忘れようとしたり、ごまかしたりします。苦しさから自分の意識から遠ざけるためです。しかし、それでは根本的な問題解決になりません。実際にはストレスで苦しみ続け、ある日、爆発することになります。それが今増えている強迫行為や不登校です。

写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)

 つまり「理由がわからない」と語っていた不登校当事者は、「理由がない」のではなく、本当はコロナで苦しんでいたということです。しかし苦しんでいることに気がつかず、爆発してから「突然に起きた」と感じるのです。学力低下も同様です。本人はちゃんとやっているつもりでも、ストレスから勉強どころではなくなっていたのでしょう。

 不登校過去最多の背景のもう一つは「生きづらさの低年齢化」です。今回の結果で特徴的なのが小学生の不登校増加でした。中学生の不登校が約5000人増に比べて、小学生の不登校は約1万人増。これまで思春期以降の問題だと見られがちだった不登校は、小学生のあいだでも広がっています。

 福島県会津若松市でフリースクールを開き、不登校の子を支えている江川和弥さん (寺子屋方丈舎)は「小学生でも同級生や教師らとの人間関係、学校生活で生きづらさを感じている子が増えています」と語っていました。私が取材した範囲でも、小学校の低学年から集団での無視やいじめがあり、「クラスカースト」と呼ばれる序列化もあります。当時19歳だった女性は「幼稚園でいじめられやすかったので、いじめられないキャラを研究して、小1は乗り切った」と語っていました。いまやいじめは「小学校入学前」にも意識する人が出るほど、低年齢化しています。このほかにも早期教育の影響もあるでしょう。子どもたちは「人間関係」や「早期教育」で早くから疲れているようです。

 不登校の過去最多の背景をまとめます。1つめは、コロナによる「言葉にならないストレス」があること。2つめは「生きづらさの低年齢化」が進んでいることでした。最後に、では「今後どうすればいいのか」を書きたいと思います。

 現在の学校システムを考えれば、不登校が一定数以上いるのは、ごく自然なことです。文科省も「不登校の子ども本人には非がない」(『不登校新聞』2017年)との認識を示しています。不登校をすること自体は悪いことではけっしてありません。しかし日本は学校中心の教育制度のため、不登校だと苦労を強いられます。いま不登校になった子は、学校で傷つき、致し方なく学校を離れた子です。これは苦しいことであり、解決されるべきことです。

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