
仁科医師が同様に懸念するのが斜視の増加だ。
「急に寄り目になったというお子さんの受診が増えています。一般に『急性内斜視』と呼ばれる症状です。脳や目の病気など原因が見当たらない場合、デジタルデバイスを長時間使用しているケースがほとんどです」
小学生以上ならものが二重に見えるなど自覚症状を訴えることが多いが、視覚の発達が不十分な6歳未満の場合、症状を自覚できない。発症当初はときどき目が寄る程度で、親も気づきにくいという。
「小さな子ほど戻りにくく、手術が必要になるケースが目立っています」(仁科医師)
確かなエビデンスはまだないが、多くの小児眼科医が急性内斜視の増加はデジタルデバイス使用が関係していると確信している。腕が短い子どもがスマホを持つと、かなり近い距離でピントを合わせる。目に力を入れ、目を内側に寄せている時間が長く続くと戻りにくくなる。ユーチューブ動画やゲームなど長時間使用になりやすいコンテンツが多いことも問題だという。
全国の小中学生に端末を配布する国のGIGAスクール構想などで子どもがデジタルデバイスに接する時間はさらなる増加が見込まれる。私たちはもはや、デジタルデバイスから逃れることは難しい。それでも、交換不能な大切な「目」を守るために、デジタルデバイスとの適切な付き合い方が求められる。(編集部・川口穣)
※AERA 2021年11月15日号