稲葉は東京都の担当課長に電話を入れた。「既存の制度の運用」とくり返す相手に「あなた、自分だったら、相部屋の施設に入れますか!」と迫り、やや対応が軟化する。4月16日、反貧困ネットワークの呼びかけで<つくろい>を含む20以上の団体が集まって結成した「新型コロナ災害緊急アクション」が、中央省庁との初交渉に臨んだ。翌日、厚生労働省は「個室利用」「衛生管理体制が整った居所」への配慮をお願いしたい、と全国の自治体に事務連絡を出す。東京都も「原則、個室対応」に改め、22日には「6カ月未満の人」も都の窓口で対応すると表明した。緊急事態宣言から2週間も経っている。<つくろい>のスタッフは、「所持金が数十円」「何日もごはんを食べていない」人たちのために居場所確保に奔走した。
しかしコロナ禍でも自治体の生活保護申請の窓口では、相部屋の施設への誘導や、あれこれ理由をつけて申請自体を拒む「水際作戦」が展開される。厚労省が「生活保護の申請は国民の権利です」とサイトに大きく掲げているにもかかわらずだ。
(文・山岡淳一郎)
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