彼女は、本当にしなやかで強い。20年ほど耐えたけれど、義母の言葉はエスカレートし、夫の言動も改善されないまま。夫婦の会話におびえる子どもにとっては母親の自分も加害者だし、このままにはできない。半ば離婚を考え、家を出るための整理をしようとプロジェクトに参加しました。

 しかし、プロジェクト終了から半年たっても彼女が家を出ることはなかったんです。就職した子どもがたまに帰るたび、「またきれいになってるね」と言うくらい部屋は整えられ、彼女は穏やかに暮らしています。45日間で何をどう片づけたのでしょうか。

 まず彼女は、片づけながら家族問題に向き合いました。すごいのは、渦中にいても夫だけを責めず、「自分にも変われる余地があるんじゃない?それをクリアにしたい」と自分にフォーカスしたこと。「自分が変われば、相手も変わる」とは言うけど、一体何なのか突きとめたかったんですね。

 以前もご紹介したように、プロジェクトでは『7つの習慣』を課題図書にしています。彼女は、第一の習慣「主体的である」を知って、問題を誰かのせいにしてきた過去にハッとしたとか。「こんな威圧的な夫じゃなかったら幸せだったのに」という思いにとらわれていたと気づいたら泣けてきて、何ごとも自分で責任を取る生き方をするんだ!と決意しました。

 彼女がすごいのは、ここから、本題の片づけを「人生でやりたいことリスト」に組み入れて主体的に進めたこと。すべきことに追われるのではなく、自ら選んだやりたいことをやり抜く。これは自信を勝ち取る最強の方法だと私は信じています。

 彼女のリストは、「子どもたちの作品を整理する」「床をぜんぶ拭き上げる」といったささいに思えることかもしれません。でも、本人にとってはずっとやりたかったこと。一個ずつクリアすることで自分を認められるようになるんですね。

花の映える憩いの場に一変。ホームパーティーでは「家族がいい雰囲気だったよ」と言ってもらえた/After
花の映える憩いの場に一変。ホームパーティーでは「家族がいい雰囲気だったよ」と言ってもらえた/After


 床を拭きながら、自分が満たされていくのと同時に夫のことを思ったそうです。「こんなに立派な家を建ててくれたのに、手入れも行き届かなくて申し訳なかったな……」。感謝の気持ちが湧き上がりました。

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床がぴかぴかになったら、夫がぬぎっぱなしをやめた