一方、岸田氏は、憲法改正に前のめりだ。敵基地攻撃能力の検討に踏み込み、防衛費GDP比2%の自民党公約も了承した。彼のイメージと矛盾するように見えるが、これは、本人の信念や哲学に基づくものではなく、安倍氏や、党内タカ派にいろいろ言われて「聞く力」を発揮し、なるほどと思ってしまったようにも見える。それほど本気ではないという見方だ。
だが、仮に本気でなくても、こういう人は非常に危ない。最近の中国の行動は日本人の危機感を煽る。国民にも嫌中意識が高まる中で、岸田氏は、中国が危ないと言われれば、「確かに」となり、だから敵基地攻撃能力をと言われて、「そうですね」と応じる。台湾有事が起きて、米国に次は日本が危ない、一緒に戦おうと言われれば、「もちろん」と、喜んで米中戦争に参加する。国内で反対運動が起きれば、「なるほど」と思うが、時すでに遅し。自分では何も決められず、最後はもちろん「力が強い」米国に押し切られる。
聞く力の上に、自分で考える力、そして決める力、さらに説得する力が揃ってこそ有能な指導者だ。岸田総理には聞く力しかない。ソフトムードに安心していると、いつの間にか戦争への道を進んでいるかもしれない。「聞く力」に騙されず、しっかり監視する必要がある。
※週刊朝日 2021年11月26日号