岸田文雄首相(C)朝日新聞社
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  岸田文雄総理が総裁選で宣伝した「聞く力」。安倍晋三氏、菅義偉氏と二代続けて「聞く耳もたず」の総理だったから、セールストークとしては有効だった。だが、「聞く力」だけでは政治が混乱する。それが早くも露呈した。

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公明党は選挙の公約で18歳以下の子供に一律10万円給付すると宣伝した。一方、岸田自民党は、困っている人に限定して支援するという公約を掲げた。一律給付はバラマキだと言われて、「そうだな」と聞く力を発揮したのだろう。

 その結果、経済対策を決める段階で自公両党は対立することになった。公明党の理念は未来への応援。岸田氏は、それももっともだと「聞く力」を発揮。丸呑みしかかった。しかし、自民は、バラマキはダメと待ったをかけた。岸田氏は、こちらにも「聞く力」を発揮。最終的には、年収960万円の所得制限を設けることで決着した。ただし、これでは9割以上の子供が対象になってしまい、ほぼ公明党案の丸呑みだ。10万円の給付方法も、5万円を年内、残りは来春にクーポンで配布という悠長なもの。消費喚起のためと誰かに言われて、「なるほど」と聞く力を発揮して決まったようだ。そこには、何の理念もない。来年の参議院選での公明党の応援が必須だから、公明党に折れるしかなかった。決めたのは岸田総理ではなく、その時の「力が強い」方だということがわかる。

 ここで私の経験を話そう。岸田氏は、いわゆる商工族。経済産業省関連の利権を配分する族議員の幹部だった。私も、管理職、幹部の時代に頻繁に「ご説明」に伺った。岸田氏は鋭い質問はしない。反対もしない。何か提案することもない。だから、「良い人」ということ以外記憶に残らない。

 そんな岸田氏は、派閥が宏池会でハト派とか、広島県選出で核廃絶に熱心などのイメージがある。そのイメージと「聞く力」はよくフィットし、国民に安心感を与えて、安倍元総理などよりずっと安全な政治家に見える。

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岸田氏がソフトムードでも「危ない」理由