浅田:希林さんは久世さんと同志みたいな感じで一緒にいろんなものをつくってきてたから、あれにはほんとにアタマに来たんだろうと思う。久世さんには家庭があったし、そういうのは許せないタイプなんですよね。周りはみんな知っているのに、誰もそれに触れないで、見て見ぬフリしてるし。それで最後の打ち上げのときに言っちゃったんだよね。
林:久世さんは激怒?
浅田:激怒というか、それでTBSをやめなきゃいけなくなっちゃって、人生が変わっちゃった。あのあと私、「仲直りしようよ」って両方に言ったけど、両方とも「絶対イヤだ」って。
林:でも、最後は和解したんでしょう?
浅田:うん。10年ぐらいたってからかな。和解したら、またベッタリになっちゃったの。
林:あ、そうなんだ。
浅田:希林さんが乳がんで入院したとき、私もしょっちゅう病院に行ってたんだけど、行くと久世さんがいつもいるんですよ。久世さん、自分が出版する小説とかについて、相談しに来てたの。希林さんの意見は的確だからね。
林:やっぱり久世さん、あんなことがあっても希林さんからは離れられなかったんですね。
浅田:希林さんと仕事した演出家とかは、離れられないと思う。
林:是枝(裕和)監督もそうみたいね。
浅田:ホン(台本)について本音で意見を言うし、それが的確だし、あんな役者さんいないと思う。「このシーンは私、いなくてもいいよね。ロケには行かないよ」ってほんとに来なかったり、セリフがすごく長いと「後半のここのセリフ、あんたが言って」って人にセリフ渡しちゃったり(笑)。
林:すごいですね、それは。
浅田:でも、そのほうがおもしろくなるのよ。それがすごい。
(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)
浅田美代子(あさだ・みよこ)/1956年、東京都生まれ。73年、ドラマ「時間ですよ」でデビュー。劇中歌「赤い風船」が大ヒットし、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。「寺内貫太郎一家」「時間ですよ・昭和元年」「釣りバカ日誌」などのドラマ・映画など出演多数。2019年、映画「エリカ38」に主演、21年には映画「朝が来る」で第30回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。動物愛護団体への支援をライフワークとしている。俳優・樹木希林さんとの思い出をつづったエッセー集『ひとりじめ』(文藝春秋)が発売中。
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※週刊朝日 2021年11月26日号より抜粋