林:それはすごく正しいアドバイスですね。

浅田:そうですよね。買わないつもりだったのに、「終のすみか」を持ったことで結局、精神的に変わったというか、落ち着きました。それまでは、たとえば車を買ったりすることでヨロイをつけてた気がするんだけど、家というちゃんとした資産を持ったことで、それがいらなくなったというか。

林:亡くなる少し前の希林さん、ご自分の死期がわかってたのか、いろんな映画に出てましたよね。

浅田:ほんとに状態は悪かったのに、メチャクチャ出てましたよ。「モリのいる場所」(2018年)、「万引き家族」(同)、「日日是好日」(同)、「エリカ38」(19年)、ドイツの映画(「命みじかし、恋せよ乙女」19年)にも出ていて、すごく精力的に仕事してらしたのよね。

林:「エリカ38」は、希林さんが「美代ちゃん、このままだったらバラエティータレントになっちゃうよ」と言って、美代子さん主演の映画を自分でプロデュースしたんでしょう?

浅田:「バラエティー色が強すぎるし、『釣りバカ日誌』とか、いい人、やさしい人の役ばっかりでおもしろくないわよ。犯人役をやりなさい」ってずっと言われてて。50代女性が起こしたワイドショーをにぎわすような殺人とかがあると、「こういうのやればいいのよ」って。「私にはこんな役来ないよ」と言ってたんだけど、年齢を20歳以上若く偽って男をだました詐欺事件があったときに、「これはいい。あんた、やれるよ」と言って、希林さんが動いたんです。

林:美代子さんへの最後のプレゼント、という感じですよね。

浅田:そうですよね。でも、ちゃんとお返ししてない感じがする。あの作品ではまだ。

林:希林さんが亡くなったとき、美代子さん、お葬式のときもご遺族の一員として、ずっと一緒に立ってましたよね。それが希林さんとの関係をあらわしてますよ。

浅田:自然にあそこにいましたね。

林:希林さんってとても冷静で知的な人ですが、本を読むと、びっくりするような一面もあるんですね。久世(光彦)さんのドラマの打ち上げのときに、久世さんがそのドラマに出ていた若い女優さんと不倫して、その女優さんがいま妊娠中だということを、希林さんが突然暴露したんでしょう? あれについて希林さんは何かおっしゃってたんですか。

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