知識のない小さな子どもにも、「嫌だ/嫌じゃない」は身体的にわかる。その感覚は日々養われていくものだと思います。なので私たち親が、子どもが「嫌だ」と言っているのに無理やりに服を着せてしまうとか、どこかに連れていくなどあまりにしすぎてしまうと、「嫌だと言っても、その意思を拾ってもらえないじゃん」という経験を重ねることになり、「基本的人権が云々(うんぬん)」と言っても実感がわかないことになります。

 面倒だなと思うことも多いですが、子どもが「やだ。行きたくない」と言ったらいったんその気持ちに付き合う。でもさすがにもう行かなきゃいけないならコミュニケーションをとった上でこっちの要望も伝えていく。そこを心掛けないと「自分のことは自分で決めていい」「嫌なことは拒絶していい」、つまり自分には基本的人権があるという感覚が、ちゃんとインストールされないと思います。

 性教育もジェンダー教育も、基本的人権という「土台」があってこそ、正しい知識や価値観が入ってくる。その土台を作ることがまず、大切だと思います。

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2023年1月30日号

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら