田中理事長宅へ家宅捜索に入る東京地検特捜部
田中理事長宅へ家宅捜索に入る東京地検特捜部

 日大相撲部OBはこう振り返る。

「田中理事長は、日大からの報酬以外は銀行口座を使わない人です。なんでも現金ですね。とりわけ、大相撲の人気力士、遠藤の騒動以降は現ナマ主義に徹していた」

 日大相撲部出身の遠藤は、田中理事長にとって大事なOBだ。遠藤が活躍し、人気がでると、「藤の会」という後援会が結成された。2014年5月に都内のホテルで開催された「藤の会発足会」で発起人会長として壇上にあがったのが、籔本被告だった。井ノ口被告も発起人として名前を連ねる。

「遠藤の後援会が発足し、たくさんのOBや支援者からカンパをしたいと、申し出があった。その時、日大相撲部の銀行口座を使った。すると、あっという間に億単位のカンパが集まった。おまけに相撲部の会計とごちゃ混ぜになり大混乱。そこに、税務当局が目をつけて、厳しく調べられた。『銀行口座を使うから、こんなことになる』と田中理事長はえらく立腹していたそうです」(前出・日大相撲部OB)

 田中理事長の妻が経営するちゃんこ料理店では、日大関係者だけでなく業者なども顔を出していたという。

「ちゃんこ店で”闇の理事会”が開かれることもありました。田中理事長の財布にはいつも100万円の札束が1つ、2つと入っており、相撲部のOBの力士らがくると『メシでも食ってこい』と現金をポンポン、配っていく。それを『ありがとうございます』『ごっちゃんです』ともらう。普通の学校法人ではありえない光景。そういう積み重ねが、今回の事件となったんだろう」(前出の相撲部OB)

 田中理事長を巡っては、常務理事時代の2007年にも、日大発注の工事業者からリベート約500万円を受け取っていた疑惑が読売新聞(2013年2月2日付)で報じられた。

 日大は、事態を重く見て「第三者委員会」を立ち上げて真相解明にあたった。この時も「中間報告」では<田中常務理事が芸術学部江古田キャンパス工事に関し、電気工事業者から、指名・発注に対する謝礼として金を受け取ったという極めて濃厚な疑いが残る>と記載されている。

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田中理事長の強大な力