日本大学板橋病院をめぐる背任事件で、東京地検特捜部は4億円あまりの損害を与えた、日大元理事・井ノ口忠男(64)と大阪の医療法人「錦秀会」(大阪市)の前理事長、籔本雅巳(61)の両被告を背任罪で追起訴した。だが、大学のトップである田中英寿理事長は未だに沈黙している。公共性の高い大学で起こった背任事件だけに説明責任を果たすべきだと疑問の声が上がっている。
19日夜、保釈された井ノ口被告は保釈金4千万円、籔本被告は8千万円を支払い、条件として多数の事件関係者と接触が禁止されたもようだ。
今後の捜査の焦点は、両被告から田中理事長に渡ったとされる約7千万円の現金だ。
朝日新聞(11月14日配信)によると、井ノ口被告は東京地検特捜部の調べに対し、薮本被告と相談し、逮捕容疑となった取引の「お礼」の趣旨で、田中理事長や田中氏の妻に総額7千万円を渡したと供述。田中氏は受領を否定しているが、このうち1千万円についてはお札を束ねた銀行の帯封が田中氏の自宅から見つかったという。
「田中理事長の最側近だった井ノ口被告は理事長からの”天の声”で動いたとは、一貫して認めず、籔本被告も田中理事長に現金を渡したことは認めるも、賄賂性は否認。趣旨はビジネス上の謝礼と主張したことで、田中理事長の立件は見送られた」(捜査関係者)
東京地検特捜部の捜査で背任の「被害者」に位置づけられている日大は6日、ホームページで「損害を被ったという事実関係が不明であり、被害届の提出は保留する」と発表している。
だが、東京地検特捜部は、2度に渡って田中理事長の自宅、妻が経営するちゃんこ料理店などを家宅捜索。現金約2億円超が自宅にあったことも明らかになった。東京地検特捜部は2億円についていた札束の「帯封」などを押収したと相次いで報じられた。
「田中理事長が2人から現金で受け取ったとされる約7千万円は申告漏れではなく、所得隠しの疑いがある」(前出の関係者)