第三者委員会関係者はこう振り返る。
「田中理事長は当時、現金は受け取っていないと強硬に主張していた。いろいろな大学関係者、業者、田中理事長が関係する弁護士からも話を聞いたが誰もが口が重く、調査がスムーズにいかなかった。業者が払った金が受注の謝礼であるのか否かが大事なポイントだったが、そこに切り込むとますます喋らなくなった。田中理事長の強大な力を感じた」
今回も田中理事長は井ノ口被告、籔本被告からの現金授受について、「カネには不自由していないので、クロになるカネはいらない」などと東京地検特捜部に反論したという。
日大は幼稚園から大学院まで、10万人の在校生がいる。卒業生は100万人ともいわれ、日本最大のマンモス学校法人でまたもトップである田中理事長の疑惑。国から日大への補助金は昨年度、約90億円が交付された。だが、背任事件で今年は保留されており、学校経営にも影響を与えかねない。日大広報部に取材を申し込んだところ、以下の回答があった。
「理事長の両事件への関与はないものと認識しています。両被告からの現金授受の事実はないものと認識しています。(家宅捜索の際、理事長宅から見つかった現金は)適正に税務申告していると聞いています」
元東京地検特捜部の落合洋司弁護士はこう指摘する。
「背任や贈収賄で狙ったが共犯関係の立証ができないことはよくある。だが、今回の事件では田中理事長へカネが渡ったことは認めているとされ、特捜部は国税庁への課税通報を詰めていくでしょう。そして、2人の公判でも、徹底的に田中理事長へのカネの流れを追及するのではないか。学校法人で背任事件というのは、コンプライアンス的にアウト。理事長は説明責任がある」