「贈与のたびに贈与契約書を交わせば問題ありませんが、大半の人が面倒くさがって省略してしまうため、名義預金と認定されてしまうケースが意外に多い。配偶者が受け取っていた生活費が名義預金と見なされたケースもあります」

 こう話す小林義崇氏は国税調査官時代、資産家宅で思わぬ名義預金の実態を目の当たりにしたという。残された夫人は生前、夫から毎月100万円以上のお金を“生活費”として受け取り、余ったお金をヘソクリとしてため込んでいたのだ。夫人は「家事に対する正当な報酬だ」と主張したが、報酬を得ていたのならば夫の扶養義務の対象外。結局、数千万円にも達したヘソクリが名義預金と認定され、追徴課税を含めて1千万円近くの納税を求められたという。度を越したヘソクリは相続財産に加算される可能性があるので、要注意だ。

 このほか、“資産フライト”が節税対策として脚光を浴びた時期もあったが、もはや、海外に資産を隠すのは不可能と考えたほうがいいという。

「国税庁には17年に『富裕層プロジェクトチーム』ができており、日本在住者の海外預金口座は各国税務当局と金融口座情報を交換する共通報告基準(CRS)を活用して把握しています。その結果、18年には日本の国税と外国税務当局との情報交換件数は前年比2.5倍に増加。CRSによる非居住者の金融口座情報の受領件数も18~19年の1年で2.5倍に増加しています」(小林氏)

 同じく、課税対象外の仏具を利用した相続税対策なども注目を浴びた時期もあったが、高額な仏具は瞬く間に相続財産に加算されるので要注意。

「長年利用されていた仏具ならば課税対象外ですが、相続発生直前に購入していたらアウト。なかには仏具からお線香の香りがするかどうかチェックする国税調査官もいるようです」(松嶋氏)

 仏壇周りは資産隠しの定番なのか、「国税調査官時代の先輩は実地調査の際、必ず仏壇の中まで確認していた」(小林氏)という。資産隠しの意図が明確となれば、重加算税の対象に。そんな最悪の相続税対策だけは避けるのが無難だ。(ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2021年12月3日号

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