今後、税制の変更によって、生前贈与で得られる“節税効果”は小さくなっていくのが確実だとみられている。今からできる効果的な相続対策とは? やってはいけない相続対策とは?
【前編/「いい相続対策、ダメな相続対策」 国税庁OB、敏腕税理士が教えます】より続く
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同じ不動産を活用した相続税対策のなかでも、近年、タワーマンションなどの高額な不動産を利用した対策には国税庁が目を光らせている。ここからは「ダメな相続対策」を紹介したい。
昨年と今年と、二つの高裁判決が相続申告に関わる税理士の間で大きな話題を呼んだ。一つは親が生前に約14億円で購入した複数の不動産を相続したAさんたちの裁判。財産評価通達に基づいて3億3千万円の評価額で相続税を申告納付したところ、国税庁が「著しく不適当と認められる財産の価額」と指摘して係争に発展。昨年6月の高裁判決で国税側の主張が認められ、3億3千万円でなく、鑑定評価額の12億7千万円への増額が「適当」とされた。
もう一つは、購入価額15億円の不動産を相続したBさんの裁判。同じく財産評価通達に基づいて約4億8千万円で相続税を申告納税したが、「不適当」とされ、時価評価の10億4千万円に評価額を増額するのが適当とされたのだ。
元国税調査官で税理士の松嶋洋氏が解説する。
「不動産の相続税評価は時価よりも安く設定されているうえに、賃貸物件ならさらに評価を下げられる。実際、Aさんたちのケースでは時価の3割未満でした。購入資金の大半を借り入れでまかなっていれば、債務は額面金額で相続税評価額から控除できるので、大きく節税できる。高裁で否認された2件のような相続税対策はいくらでも行われているのですが、その2件はほかにも節税スキームを活用しており、あまりに露骨すぎた」
Aさん、Bさんの問題の物件はいずれも相続発生の直前ないし、2~3年前に被相続人が購入したものだった。おまけに、相続対策を目的とした購入であることが明らかだったという。