クラウドの仕組みを利用して在庫を管理し、販売履歴もスマートフォンで確認する。「足を運ばなくてもスマホで管理できるのは楽。今はワクチン用に冷凍輸送庫の開発も進み、この時代に生まれたものをフル活用できている」と菰岡さん。
同店ではコロナ禍に入る前から、配膳用のロボットを店舗に導入するなど、デジタル化にも前向きに取り組んできた。
「BSEや東日本大震災など、外的な要因で売り上げが途絶えてしまうことは以前もあった。新しい試みに挑戦し続けることで、危機に負けない、強い飲食店を作りたい」
生活必需品を売る自販機も登場している。

横浜市の鶴見区役所1階に、この4月から置かれたのが「おむつ自販機」。飲料の横に、MとLサイズのおむつ(各200円)やおしりふき(170円)、ウェットシート(110円)と、おむつ替えのグッズをそろえた。売り上げの一部は、子どもを支援する「ウェルカムベビープロジェクト」に寄付される。
導入の橋渡しをしたのは、区内で不動産事業を手がける中西美里さん。昨年5月、保育園やカフェが入る複合施設の前におむつ自販機を設置した。「区役所におむつの自販機があれば、子育て中の親たちに便利では」と考え、同区で児童支援を担当する民生委員をしていた夫を通じ、区役所に話を持ちかけた。
同区役所の柏木利明・総務課長は「役所が開いている間はいつでも買えるので、お父さんお母さん方に存在を知っていただきたい」と話す。
扱う商品が年々、バラエティー豊かになっている点について、自動販売機の情報サイト「山田屋」を運営する野村誠さんは「冷蔵・冷凍食品も自販機で扱えるようになり、活用方法を模索する企業が増えた。以前は訪日客向けに物珍しさを狙うものも多かったが、コロナの感染拡大以降は、住民の暮らしに必要な商品が売られることが増えている」と分析する。
コロナ禍を契機に、生活スタイルや働き方の見直しが進んだ。時代のニーズをくみ取りながら、自販機もまた進化を遂げていると言えそうだ。(本誌・松岡瑛理)
※週刊朝日 2021年12月3日号