「全部で40種類はあります。本物に似せた雰囲気を出すのに苦労しましたが、その分思い入れが深いです」。自販機を考案した同店のマネジャー、浦田智恵さんはそう話す。
コロナの感染拡大の影響で、入店人数を2組までに制限せざるを得なくなった。外に行列ができ、「待ち時間を少しでも減らしたい」と思いついたのが自販機。菓子用の冷蔵自販機を導入し、平日・休日問わず24時間、買える体制を整えた。ひとつ300円。見た目がいびつな商品が、アウトレット品(280円)として並ぶこともある。今年9月から売り始めたところ、週平均で400~500個の売り上げがある。
「定休日の日曜や夜間も買えてありがたいという声が多く、続けていく意味を感じます」(智恵さん)
智恵さんの母・千枝子さん(62)が看護師として働く傍ら、夫が経営する居酒屋で振る舞う菓子が評判となり、自宅の一角で店を始めた。有精卵を使い、メレンゲで仕上げるケーキは、耳元でちぎるとしゅわっと音がする。
店頭と変わらぬ味を楽しんでもらうため、賞味期限まで2日を切った自販機の商品は入れ替える。千枝子さんは「どちらも卵を割るところから手作り。味わいを楽しんでもらいたい」と話す。
「コロナ禍でも非対面・非接触でできるビジネスを模索していたら、『自販機』に行きつきました」。千葉県印西市の老舗焼き肉店「京城苑」を運営する松山商事の専務、菰岡(こもおか)翼さんはこう語る。

今年5月から店前に置いたのが冷凍肉料理の自販機。扱うのは肉ギョーザ2種類、生ハンバーグ、牛トロフレークの4種。いずれも、素材の味をしっかり感じられる本格派だ。
緊急事態宣言が出ていた昨年4月、海外のニュースを見ていたら、中国の無人倉庫でロボットが商品を売る姿が目に留まった。「治安の良い日本なら自販機でも商品は売れる」と直感。保健所の反応は芳しくなかったが、2カ月後に改正食品衛生法が施行され、冷凍食品の販売が許可制から届け出制になったことに背中を押された。