放火され、焼け落ちた松尾さんの家(筆者提供)
放火され、焼け落ちた松尾さんの家(筆者提供)
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 兵庫県稲美町の民家が放火され全焼し、焼け跡から2人の子供の遺体が発見された事件が大きく動いた。兵庫県警は24日、民家に同居していた松尾留与容疑者(54)を現住建造物等放火と殺人の疑いで逮捕した。

【写真】伯父の放火で亡くなった悲劇の兄弟

 事件は19日深夜の午後11時35分ごろ、住んでいた自宅に火を放ち、同居していた小学生の兄弟・松尾侑城くん(12)と真輝くん(7)を殺害した容疑だ。

 松尾さん一家は、侑城くんと真輝くん、50代の父、40代の母、そして松尾容疑者の5人暮らし。松尾容疑者は母の兄で、亡くなった兄弟にとって伯父にあたる。1、2年前に実家に舞い戻ってきたという。

「情報があり、24日午後1時ごろ、大阪市北区の扇町公園に捜査員を派遣。ベンチに座っている留与容疑者と似た人物がいたので声をかけたところ、本人だと認めた。車に乗せ、捜査本部がある加古川署へ任意同行。放火と殺人について認めたので、逮捕となった。取り調べにも素直に応じている」(捜査関係者) 

 所持金は数千円しかなく、逃走したり抵抗したりすることもなかったという。甥たちを殺害した松尾容疑者はどんな人物なのか。 

「兄の留与容疑者もここが実家ですね。実家は両親が亡くなった後、妹一家が住んでいたが、留与容疑者は『長男なので家を相続した』と語っていた。地元の中学校を卒業して、神戸の方の会社に就職した。そして、大阪市の会社に転職したと聞いた。卒業後も、お正月とかには帰ってきたみたいです。道で会ったら『久しぶりやね』とか挨拶したことがあった。ですが、半年ほど前か、たまたま留与容疑者を見かけてどうしたのかと聞くと、『いろいろあってね』というばかり。断片的な会話からわかったのはコロナが影響して、仕事がなくなってしまい実家に帰ってきたそうです」(前出・近所の人)

  松尾さん夫妻は近所の人に、「(兄は)コロナでどうしようもなくなり、戻ってきた」と話していたという。 

 放火された日、兄弟の父親は、深夜まで続く母親のスーパーマーケットの仕事が終わる時間に車で迎えに行った。そのすきを狙った留与容疑者の卑劣な犯行だった。 

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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自暴自棄になっていた容疑者