出頭した子たちは、「仮放免」の在留資格を得たうえで預かります。地域の皆さんにも安心してもらうためには、法に従いながら活動することは必須です。大恩寺では安心安全な活動をするために、入管・ベトナム大使館・警察としっかりコンタクトをとって、何かあったらすぐに連絡が取れる状態にしています。こうした点は強調しておきたいですね。

活動が徐々に認知され、国内外から数多くの寄付や支援物資が届くようになった(タム・チーさん提供)
活動が徐々に認知され、国内外から数多くの寄付や支援物資が届くようになった(タム・チーさん提供)

——厚生労働省の調査(「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」)によれば、2020年に実習生を雇用する国内企業8124件のうち、約7割で労働時間や安全基準などの法令違反が確認されています。

逃げ出した実習生たちは、特に建設現場やとびの仕事に耐えられなくなってしまったケースが多い。日本人が避けるような、身体を酷使する重労働や危険な仕事をやらされ、そのうえ低賃金。一度逃げた子たちは、二度と戻りたくないと言っています。危険な現場でケガをしたという子もいましたし、胃炎で具合を悪くしても病院に行かせてもらえず、そのまま45日間働いた末に逃げ出したという子もいました。

——実習生の失踪を減らすためには何が必要だと考えますか。

まずは悪い監理団体を減らすこと。実習生を保護する立場にある監理団体は、ちゃんとした団体もある一方、無責任な団体もあります。現場で労災が起きても、あるいは死んでしまった場合も面倒を見ずに、犠牲者の友人がお寺を頼ってくることもあります。

監理団体任せにせず、ベトナム政府と日本政府の双方が介入したほうがいいと思う。全部民間にやらせてしまっていたから、こんな状態になってしまったのだと思います。今年からは日本政府の後援で、「NAGOMi」という一般財団法人が「不正行為撲滅キャンペーン」を開始し、悪い管理団体を減らすために動いてくれるようになりました。

また、人間としてのいたわりやコミュニケーションも大事だと思います。同じ人間として、愛情・人情・感情をもって接してほしい。たまに週末に出かけてみたり、一緒に温泉に入ったり、職場のバーベキューに誘ってもらうといったことでいいのです。そうすれば自分も大事にされていると気づいて、失踪者は減っていくと思いますよ。

——制度そのものにも限界はありませんか。1993年に導入された技能実習制度はもともと、培った技能を母国に持ち帰るための「技術移転」を目的に始まりました。現実との乖離が指摘されています。

次のページ
借金で後戻りできない状況