コロナの余波で、大恩寺は行き場を失ったベトナム人らであふれた(タム・チーさん提供)
コロナの余波で、大恩寺は行き場を失ったベトナム人らであふれた(タム・チーさん提供)

大恩寺はこれまで、彼らへの食糧支援や保護活動などをしてきましたが、コロナ禍で特に大変だったのは、お寺に駆け込んできた帰国困難者の支援です。仕事がなくなった実習生たちは帰国したくても飛行機がないので、行き場を失った子たちがお寺に殺到しました。

ベトナム大使館と連携して帰国手続きや空港までの送迎、一時預かりなどの支援をし、コロナ以降は1000人以上を帰国させてきました。3密対策のため開設した3つのシェルターを含めると、2065人です。受け入れては見送ってまた受け入れる、の繰り返し。多いときはお寺で60~70人を預かっているような状況で、本当に大変でした。

――現在大恩寺で預かっている人の事情について教えてください。

20人ほどを保護し、一時的に共同生活を送っています。職場から逃げてきた元実習生や、解雇で行き場を失った子などさまざまです。

多くは新型コロナの帰国困難者を対象にした「特定活動」の在留資格を得て、半年間の在留を許されている状態です。帰国できない事情が続いている間は半年ごとに更新を受けることができますが、飛行機が飛ぶようになってきたので、半年後には帰国することになってしまう可能性が高いです。なんとか日本に残れるよう、最大2年間の延長が許される「特定技能」の試験を通過するため、勉強に励んでいる子もいます。

ほかに、一度失踪し、実習生資格が切れて「不法滞在」で逮捕され、「仮放免」の在留資格で預かっている元実習生も2人います。しかし、一度失踪した実習生は、正規の仕事にはつけなくなります。

どの在留資格でも、仕事をしたくてもその機会が与えられず、この先どうなるかわからない不安でいっぱいです。

——失踪した実習生たちが不法滞在で検挙される事例が後を絶ちませんが、お寺では、不法滞在にあたる人を保護することはないのでしょうか。

お寺で保護する子たちは皆、法律に準じて預かっているので、不法滞在者はいません。「特定活動」や「短期滞在」などの在留資格がある子たちです。もし不法滞在にあたる人が駆け込んできた場合は、入管に通報し、本人に出頭してもらうようにしています。

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過酷すぎる現場 病院に行かせてもらえない実習生も