先週の木曜日は、感謝祭でした。Thanksgiving(サンクスギビング)と呼ばれるこの祭日は、家族や親せきで集まってご馳走を囲みゆっくり過ごす、北米でもっとも大切な行事のひとつです。
しかしハロウィンやクリスマスと比べると、日本での知名度はいまひとつではないでしょうか。ハロウィンといえばカボチャ、クリスマスといえばサンタクロースというように七面鳥やカカシといった感謝祭ならではのアイコンもあるのですが、日本ではほとんど目にしません。
我が家の子どもたちは、ルーツの半分がアメリカにあります。日本に住んでいても感謝祭の文化は伝えたいと思い、感謝祭がテーマの本を読んだりパンプキンパイを焼いたりしてみました。七面鳥柄のワンピースもあるので、先日「これ着ていったら?」と5歳の娘に提案しました。「これを着て、アメリカにはサンクスギビングっていうお祭りがあるんだよってお友だちに教えてみたら?」と。
すると娘はたちまち顔を険しくして、「イヤだ」と言うのでした。「だって、サンクスギビングなんてみんな知らないもん。恥ずかしいよ」と。恥ずかしいなんてことないでしょう、知らないことを知れてみんなうれしいと思うけど、と言ってみても娘はイヤだの一点張りでした。
そういえば同じようなことがアメリカに住んでいるころにもあったな、と思い出しました。アメリカの園・学校には「Show and Tell」なるプログラムがあります。家から各自何か持ち物を持っていって、それについて先生とクラスメートへ簡単に説明するというプレゼンテーションの練習みたいなものです。娘のプリスクールでは毎週「今週のアルファベット」が設定され、そのアルファベットから始まる単語のものを持っていくことになっていました。
その週のアルファベットはYでした。Yってなかなか難しいのです。ほかのアルファベットと比べると子ども向けの名詞は限られます。yogurt(ヨーグルト)やyard(庭)を持っていけるわけではなし、こりゃきっと教室がyarn(毛糸)や yellow(黄色)のものであふれるぞと思ったわたしは、クローゼットの奥深くにしまってあった日本の小銭を取り出して娘に言いました。「このコイン持っていったら? 円っていう日本のお金だよって言ったらきっとみんな珍しがるよ」。日本円(Yen)なら絶対人とかぶらないと思ったのですが、そのときも娘は渋い顔をしていました。まだ3歳だったので嫌な気持ちを言葉にできなかったのでしょう、拒否こそしませんでしたが、プリスクールで実際に日本円の説明をしたのかどうかは謎のままです。