嘉門タツオさん
嘉門タツオさん

「ヤンキーの兄ちゃんのうた」「鼻から牛乳」などオリジナリティーあふれる曲を歌い続けてきたシンガー・ソングライターの嘉門タツオさん(62)。9月27日に母親が逝去していたことを初めて明かし、今だからこそあふれる思いを吐露しました。

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 これまで発表してなかったんですけど、実は今年9月27日に母が亡くなりまして。先日、四十九日法要も終わりました。享年89でした。

 親の世代のみならず、同世代でも先にすでにアッチの世界に向かった仲間もいてますし、自分自身も「どうやって死んでいくんやろう」と考える年齢になりました。その中で、母の死にはいろいろと考えさせられましたね。

 晩年は地元の大阪・茨木市にある介護付き高齢者住宅で生活をしてたんですけど、3年ほど前に脳梗塞をやりまして。そこから転んだり、心臓の具合が良くなかったり、少しずつ弱っていって最期は老衰でした。

 変な言い方かもしれませんけど、少しずつ目に見えて弱っていきましたし、こちらも覚悟ができました。そんな中でも本人は穏やかで、こちらに気遣いもくれてました。少しずつ高度が低くなって、最後は静かに着陸というか。人間必ず死ぬわけですし、ナニな言い方ですけど、息子から見てもエエ死に方やったと思っています。

 それとね、母は何でも書いて残す人間だったんです。段ボール箱いっぱいに原稿用紙が残されていて、ここ何十年かで思ったことが書き留めてありました。

 80歳の頃に書いたものの中に「何の悔いも残らない楽しい人生でした。ありがとう」と書いてあって。いきなり命の火が尽きる人もいくらでもいますし、自分も周りも本当につらくなる死もたくさんあります。そんな中で、こんな死もあるんやなと思いました。

 もちろん、重いテーマですしセンシティブな領域でもありますけど、死ぬということへの思いを歌う。そして僕が歌う以上は皆さんに楽しんでもらいながら歌う。母親がいなくなって、それも僕がやるべきことになったのかなと今思っています。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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