気持ちを入れ替えようとしたフリーの朝、フランス大会で鍵山と佐藤がダブル表彰台となった結果をチェック。
「2人がワンツー。駿は4回転ルッツを決めたし、優真は全体的に仕上げた演技で、刺激になりました。優真がイタリア大会でショート7位から優勝したのも見ていたので『まだまだわからない、僕も7位だ』という気持ちが芽生えました」
羽生結弦選手のバトン
フリーは4回転トーループとサルコーを決め大逆転で優勝。点数を見て安堵し、こう誓った。
「世界ジュニアでは表彰台、全日本選手権では(ショート6位以内で)フリーの最終グループに入ることが目標です」
この結果を鍵山と佐藤はフランスでチェック。鍵山は「佳生は逆転優勝すごいな」と背中を押され、こう話した。
「僕は早く4回転ループを練習したいです。帰国後の隔離期間に駿と一緒になるので、いろいろ見ながらジャンプを安定させて自分のものにしたい」
さらに同日程のワルシャワ杯では、21歳の山本草太が復活を印象づける優勝を飾った。山本は平昌五輪の候補と言われながらも、骨折と手術、コーチの変更が続き、力を発揮できないまま6年が過ぎていた。今季、宇野昌磨を育てた山田満知子・樋口美穂子の門下生となり再発進。NHK杯は羽生結弦のけがで補欠出場となると、「羽生選手のバトンを僕自身のスケート人生に繋げたい」と語り、7位。ワルシャワ杯では、ショートで美しい4回転サルコーを決めて首位発進すると、フリーでは柔らかいスケーティングの魅力を見せ、総合247・65点で2季ぶりに自己ベストを更新した。
「今までは、試合では葛藤や怒りを出して自分を奮い立たせていたのですが、先生から『落ち着いてリラックスして』と言われて、自分らしくありのままで練習通りやればいいということを感じました」
それぞれの階段を上っていく次世代エースたち。GPファイナル、そして全日本選手権で、さらなる開花を見せてくれそうだ。(ライター・野口美恵)
※AERA 2021年12月6日号