ポスト羽生結弦、宇野昌磨のレースが急展開している。今季のグランプリシリーズ2連勝により鍵山優真は世界ランク1位に。同世代の男子スケーターたちも世界を相手に存在感を見せ始めた。AERA 2021年12月6日号の記事を紹介する。
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グランプリ(GP)シリーズの第5戦、フランス大会の表彰式で、18歳の鍵山優真と17歳の佐藤駿は金と銀のメダルを胸に、緊張した面持ちだった。リンクサイドまで滑っていくと、二つの日の丸を背負いニッコリと2ショットに納まる。小学生時代から切磋琢磨してきた2人が、GPの表彰台で肩を並べる日がとうとうやってきたのだ。
「駿とは小さいころから競い合うことが多く、ジャンプは駿のほうがうまくて、自分とは違う表現の仕方もうまい。一緒に練習することでモチベーションも上がるし、いいライバルです」
鍵山がそう言うと、佐藤も応える。
「優真はジャンプもスピンもステップもすべてがトップ選手の滑りなので、まねできることを学んで、これからも2人で頑張っていけたらなと思います」
日本男子にさらなる華やかな時代が到来することを予感させる二つの輝きだった。
今季、鍵山の気迫は世界の頂点にまで届きそうな勢いだ。11月のイタリア大会では、ショート7位からの大逆転で優勝した。
「まさか巻き返せるとは思わなかったのですが、あんなこともあるんだな、と。諦めない心が大事だなって思いました」
優勝しても「悔しい」
同月のフランス大会では、ショートで4回転2本をきっちり決め、100・64点で首位発進。
「イタリア大会は自分の弱さという一つの経験になりました。その失敗を今大会に生かそうと、ウォーミングアップを変えてたくさん動いてみたら、うまくいきました」
フリーは、演技後半に三つのミスが続いてしまったものの、首位をキープし、総合286・41点で優勝を決めた。ミスがありながらも演技全体の評価が崩れないというのは、もはやベテランの得点の稼ぎ方である。