42歳での電撃結婚。伝説の高齢出産から4年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は、クリスマスケーキについての妄想とクリスマスの思い出、そして乙女な夫についてお届けする。
【我が家のクリスマスツリーと我が子…唐橋充さんのイラストはこちら】
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年の瀬も押し迫ってまいりましたね。クリスマスにお正月。
独身の時には全くテンション上がらなかったイベントだけど、家族ができてからは、ちゃんとお祝いするようになった。
自分のために何かする気にはならないが、身近な人の喜ぶ顔を見たいと思ったらやる気が出て来たってことだろう。
クリスマスケーキをネットで物色するのも楽しい。どれも趣向が凝らされていて、見ているだけでワクワクしてくる。高級ホテルのケーキなんてうっとりするほど美しい。芸術品だ。
これが我が家の食卓に並んだ姿を想像する。
見た瞬間「わー」と顔を輝かせる我が子。
夫は「えー、高そう、これいくらするの?」と間違いなく聞く。
そんなやぼな質問を微笑んでスルーする私。
「ろうそく立てようよ」と我が子。
「クリスマスケーキにはろうそく刺さないのよ」と私。
しかし、最近の我が子の口癖は「やだ」だ。言うことをぜんぜん聞かない。
「ためしてみよう」と、夫はろうそくを持ってくるだろう。
そしてケーキにはブスブスとろうそくが突き立てられる。
そして火がつけられる。
「はっぴばーすでー」と我が子は歌い出し、火を吹き消すだろう。
私が切り分けようとナイフを取り出すと、「やる!」と我が子は言い出して聞かないだろう。
仕方なく握らせたナイフに手を添えて、きれいに切り分けようと誘導する私の力にあの子は全力で争うのだろう。
ケーキは切り刻まれ、夫はつまみぐいを始めるだろう。
間違いない。
私には見える……。無残に崩れたケーキの行く末が……。
だめだ。4歳児と44歳児のたった一瞬の感動のために2万円近くするケーキなどもったいない。覚えてるかどうかも分からないのに。