飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、福岡県在住のヨガ講師、児玉妙子さん。自営業の夫と高齢猫とのんびり暮らしていた夏の終わり、家の前で一匹の三毛猫と出会いました。その猫は顔に大けがを負っていて、獣医師によると「傷口からしてエンジンルームでの事故」だそうです。保護から3カ月、奇跡的ながんばりをみせる猫のこと、今の思いを話してもらいました。
◆三毛猫に声をかけると、振り返った顔が……
8月末の夕方のこと、仕事から帰ってくる時に、自宅の前をふらーっと歩く猫さんをみかけました。毛がぼさぼさで体もガリガリな三毛猫です。
私は日ごろから、猫さんを見つけると「おーい」と声をかけるタイプなので、いつものように呼んだのですが、振り返った瞬間、「きゃっ」と叫びそうになりました。鼻や上唇がなく、顔に穴が空いているよう……。
こわごわ見ると、何かでスパッと顔を削られたような感じです。
「なんか猫とは思えない猫さんがおる、顔がめちゃくちゃで」
急いで家にいた夫を呼びました。遠巻きに見ていると、猫さんはブロック塀を登ろうとしながら(力が入らないのか)難儀していました。
猫さんを病院に連れていこうと決め、キャリーバッグにいれました。ところが、受け入れてくれる動物病院がなかなか見つからない。
事前に「こんなけがを負って痩せた野良猫さんがいるんですが、連れていっていいですか?」と電話で説明すると、「状況からして人獣共通感染症もありそうだし、うちは無理」とか、「連れてきても無駄です」とことごとく断られてしまった。でも一カ所だけ、診てくれる動物病院が見つかり、車で連れていきました。
先生は猫さんの傷口を見て、「かなり鋭利なもので切れている。これはおそらく車のエンジンルームに入ったことによる事故でしょう」と診断しました。
虐待とかの傷ではないなと私も素人ながら思っていたのですが。ファンベルトが回った瞬間に顔が触れて、一瞬にして切れたようでした。一時期、車のボンネットをバンバンと叩いて猫さんに知らせる(車から出す)「猫バンバン」がネットでも話題になりましたが、入り込んでしまう猫さんは実際にいるものなのです。
診察した上で先生は、今後の見通しを冷静に説明してくれました。