けがの処置は、初めのうちは抗生剤と止血剤をウエットフードに混ぜてあげていました。薬入りをちゃんと食べてくれましたよ。食べることに執着があるのか、朝夕、食事の時間になると立ち上がって“人間、メシくれ、メシ”というように騒ぎますが、それ以外は静か。肝が据わってる感じでした。

 大きな音も平気。掃除機をかけてもおびえず、それどころか、(ケージの隙間から)前足を延ばして、掃除機を叩こうとしたり。

 だから、「『あいつ』は、動じない。すごいよね」と夫とも話していました。

先住の「きな」との同居を夢みていた……(提供)
先住の「きな」との同居を夢みていた……(提供)

 平然と話しているように思われるかもしれないですが、私は初めの頃に顔のけがを正視できず、眼鏡の上にさらに大きめのサングラスをして、視界に制限をかけてケアをしていたんです。

 その点、夫は冷静でした。夫は実家でもずっとのいる環境で育ってきていたので、猫を許容する力も大きく、猫を愛する用意もすごくできていた。

「あいつ」は、けがのせいでグルーミングができず皮膚にノミの糞がそのまま残って、抜け毛もそのまま絡まって、それでぼさぼさしていました。シャンプーをしても毛の絡まりがほぐれなかったので、夫が毎日、櫛でせっせと梳いてくれました。

 夫の理解があったからこそ、「あいつ」のケアもわが家でできました。夫がいなければ、玄関に置くことすら無理だったでしょう。

 家に来て2カ月くらいすると、「あいつ」に変化が起きました。

>>【後編:15歳の茶トラ愛猫の看取りと旅立ち 「ここにおるよー」瀕死の借りぐらし猫が喪失感を埋めた】 に続く

(水野マルコ)

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