■不器用なので写真しかできない
近年、オリンピック開催を目指して、さまざまな場所で大規模な再開発が進められた東京の街。
しかし、作品を見ると、羽田空港、上野・不忍池、JR東京駅、築地市場跡などのほか、住宅地や何げない街角と、意外な場所がけっこう多い。
それは「未来の東京って、こうなっているんじゃないかな、という、自分なりの解釈」と言う。
渋谷駅前だろうか、新納さんは作品の1枚を見せながら、こう言った。
「ちなみに、この駅前の看板に『5G到来』みたいなことが書いてあったんですけれど、それはPhotoshop(画像処理ソフト)で消しました。作品のコンセプトからすると、おかしなことになっちゃうので」
確かに、未来の東京に「5G到来」は変だ。
一方、画像の加工は最小限にとどめたという。
「ぼくの作品のベースは、リアルなものですから、なんでもかんでもPhotoshopで合成してつくるのは避けたい。そこまでやったら、もう、写真ではなく、グラフィックになっちゃいますから」
大手広告代理店でコマーシャル写真の画像処理を手がける新納さんは、技術的にはかなりのことができるという。
「例えば、昼間写した写真を夕焼けにすることもできるんです。でも、そこまでやってしまうと、ほんとうに写真が終わってしまう。ぼくはAI(人工知能)とか、VR(仮想現実)とかも、かじったんですけれど、不器用なので、結局、写真しかできない。そんな自分のよりどころがなくなってしまう。あと、『いま』を撮った記録であるので、そのへんは残しておきたいという気持ちもあるんです」
これまで写真が担ってきた役割は終焉を迎えている、と語る新納さん。
「でも、そう言いながらも毎日撮り歩いています。自己矛盾していますよね(笑)」
■今回の作品をひと言でいうと
この記事を執筆中、新納さんのTwitterへのこんな投稿を見つけた。
<写真を撮っていたら、ランドセル背負った小学生に「何、撮っているの?」と聞かれた。この質問がいちばんきつい。自分の撮影意図を完結に述べられるかの勝負場なのだ>
そして、新納さんがこう言っていたのを思い出した。
「今回の作品は、未来は撮れない、ということに対して、違うよ、みたいなことも言いたいのかな。一言でいうと、勝手な妄想です(笑)」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】新納翔写真展「PETALOPOLIS」
コミュニケーションギャラリー ふげん社 12月9日~12月26日