10年間、撮りためた東京の写真から選び、『PEELING CITY』にまとめた際、そこに当てはまらない写真が残った。
「これまでの、どの作品にも入らない、何か変だな、と思った写真」。それが、今回の作品の出発点となった。
新納さんは違和感を覚えた理由を考えた。
「街が再開発されると、そこだけ時代が違うような建物がいきなりドーンと建つ。それが違和感の理由だという結論にいたった」
違和感を覚えたもの――それは、未来都市のかけらだった。
「いまの東京では、ところどころでしか目にしない小さなかけらだけど、それがやがて都市全体を覆いつくす。そう考えると、そのかけらを集めれば数百年後の東京の景色になるんじゃないかな、と考えたんです。いま、未来を撮ることは可能なんじゃないかな、と」
■「都市圧」に負けないカメラ
撮影した作品はすべて縦写真。『PEELING CITY』では全部、横写真だったが、今回はそれについても大きな違和感を覚えたという。
「タワマンとか、東京って、横に広がれないので、どんどん上に伸びていく。そんな、いまの時代に合っているのって、縦位置じゃないかな、と。だから今回はオール縦位置です」
撮影に使ったのは中判のデジタルカメラ、PENTAX645D/Z。新納さんの手元に置かれたカメラはかなり大きなもので、見るからに重そうだが、撮影にはその重さが不可欠という。
「都市を撮影していると、『圧』を感じるんです。なんか、勝手に都市から攻撃されている、とぼくは思っていて(笑)。特に撮りたいところはすごい圧を感じる。それに耐えながら、もぎ取っていく、という感じで写している。歯を食いしばって、『コノヤロー』とか言いながら、すごい力でシャッターボタンを押す。『都市力』に対抗するためには、こういう重いカメラでないと、はね返されてしまう」
それが未来を感じさせる「ペタロ味がある景色」の見える場所。しかし、それをいったいどうやって探すのか?
「グーグルマップのストリートビューはけっこう見ていますね。あと、SNSにたくさん流れている写真を見て、『ああ、ここを撮ろう』とか。そんな探し方をしています。撮影はピーカン(晴天)が好きなので、曇天のときは自転車に乗って、ロケハンしたり」