写真家・新納翔さんの作品展「PETALOPOLIS」が12月9日から東京・目黒のコミュニケーションギャラリー ふげん社で開催される。新納さんに聞いた。
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インタビュー中、新納さんは声をひそめ、こう言った。
「写真って、もう終わっている。写真そのものを否定するつもりはないんですけれど、写真単体で何かをする、という時代じゃあ、もうないな、と。ぼくはそう思っている。だから、作品について、リアリズム(写実主義)がどうとか、という考えも、ないです」
そんな新納さんが写したのは「300年後の東京」。「PETALOPOLIS(ペタロポリス)」だ。
この作品は2017年に出版した写真集『PEELING CITY』(ふげん社)の続編でもある。
「PEEL(ピール)というのは『剥がす』という意味。都市の景色って、歩いている人も含めて、なんかうそくさいな、と。そんな、うがった目で街を見ていた。その表層をめくったところに都市の本質があるんじゃないか。そんな感じで東京を写してまとめたのが『PEELING CITY』」
世界最大のメガロポリス(都市の集合体)、東京。通勤圏内の人口は約4000万人。
『PEELING CITY』では、それを越える「ギガロポリス」のイメージで東京を撮影した。
さらに今回は、それよりもずっと先のイメージで、「テラ」を飛び越し、「ペタロポリス」と命名(メガ、ギガ、テラ、ペタは、百万、10億、兆、千兆を表す数字の単位)。
一般にはあまりなじみのない数字の単位だが、それについて聞くと、「ぼくが理系というのもあると思うんです」と言う。
■見つけた「未来都市のかけら」
小学生のころは「毛利衛さんにあこがれて、宇宙飛行士になるのが夢だった」。
2001年、早稲田大学理工学部に入学。
「タイムマシンとか、時空の研究をしていたんです。だから今回、数百年後の東京、みたいなコンセプトにいたったのかもしれない」と、説明する。
「でも、タイトルについては、単純に『ペタ』という語感が好きだったというのもちょっとあります。ずっとペタペタと街を歩いていたので(笑)」