■宇髄天元の不思議な再登場シーン

 柱合会議では「派手派手だ」という決めゼリフとともに、炭治郎と禰豆子の処刑に賛同し、宇髄は強烈なインパクトを残していた。そして、「遊郭編」での宇髄の登場シーンでは、遊郭捜査のために、女性隊士を無理やり連れ出そうとしている場面が描かれる。

 胡蝶(こちょう)しのぶの邸宅・蝶屋敷にいる女性隊士・アオイと、隊士ですらない少女“なほちゃん”を遊郭に潜入させようとしたため、宇髄は蝶屋敷の女性たちに泣かれ、非難されている。

 だが宇髄は、蝶屋敷の女の子たちの涙の懇願を無視し、その場に駆けつけて難詰する炭治郎たちを威圧した。宇髄の気迫は相当のものだったが、それでも、炭治郎・伊之助・善逸は蝶屋敷の女の子たちのために引かなかった。

<アオイさんの代わりに俺たちが行く>(竈門炭治郎/8巻・第70話「人攫い」)

<今帰った所だが 俺は力が有り余ってる 行ってやってもいいぜ!>(嘴平伊之助/8巻・第70話「人攫い」)

<アアアアアオイちゃんを放してもらおうか たとえアンタが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひ引かないぜ>(我妻善逸/8巻・第70話「人攫い」)

 自分たちが代わりに任務に同行すると宣言したのだ。

■宇髄天元の思惑

 この3人の決意の言葉を聞くと、宇髄は急に炭治郎たちの提案をあっさりと受け入れる。

<……あっそォ じゃあ一緒に来ていただこうかね>(宇髄天元/8巻・第70話「人攫い」)

 元・忍としての宇髄の情報収集能力を考えると、炭治郎たちの留守を見計らうこと、女の子たちを静かに連れて行くことなど簡単だったはずだ。それを宇髄は「わざわざ」彼らが任務から帰ってきた時に蝶屋敷にやってきて、目につきやすいように「派手に」騒いでいる。

 煉獄の最期の戦いの場にいた“あの3人”に、鬼殺隊の隊士として、真の決意があるのであれば、自分の任務に同行させてもよいという思いがあったのではないだろうか。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
次のページ
「俺は煉獄のようにはできねえ」